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ガス人間第一号

The Human Vapor / 1960
IMDb ⭐ 6.3🕐 91分🎬 東宝1960年公開
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2026年7月13日時点で日本国内配信を確認
U
U-NEXT
D
DMM TV
D
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TSUTAYA DISCAS
2026年7月13日時点でDVD・Blu-rayの宅配レンタルを確認
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DVD / Blu-ray
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1960年公開。東宝の「変身人間シリーズ」第3作であり、本多猪四郎が監督、円谷英二が特技監督を務めた。怪物映画として大掛かりな見せ場を前面に出すのではなく、犯罪サスペンス、古典芸能、人体改造のSF設定、悲恋を一つへまとめ、特撮は本編を支える側へ回っている。本多猪四郎公式サイトも、本作を密室犯罪と芸に生きる者の業を結びつけたジャンル混合の作品と位置づけている。東宝特撮の看板スタッフを揃えながら、派手さより人間ドラマを選んだあたり、怪物より企画会議のほうがよほど大胆だったようだ。

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冒頭は、追跡中の銀行強盗が忽然と消える不可能犯罪の捜査劇として始まる。警察と新聞記者が金の流れを追う現実的な手順へ、没落した日本舞踊の家元、宇宙飛行に耐える肉体を作ろうとした人体実験、異形の男の報われない愛が重なる。怪奇SFと近松的な悲恋が別々の要素ではなく、一つの犯罪動機として結び付いている。

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東宝の変身人間路線では、『美女と液体人間』が死体消失を、『電送人間』がアリバイ・トリックを扱った。第3弾は、人間が気体になる能力を銀行の金庫へ侵入する手段と、愛する女性を支えるための罪に結び付けた。文化庁関連の特撮調査でも、1960年に『電送人間』と本作が続けて発表された系譜が整理されている。怪獣の巨大さではなく、身体の境界が消える怖さを犯罪劇へ移した作品である。

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物語の出発点には、米国人脚本家ジョン・メレディス・ルーカスの着想があった。木村武はそれをそのまま映像化せず、没落した日本舞踊の家元・藤千代と、彼女の舞台を取り戻そうとする水野の関係へ組み直した。銀行強盗、宇宙飛行用の人体実験、日本舞踊の公演が一本の動機でつながり、海外由来のSF案は芸と献身に縛られた日本の怪奇悲劇へ移植された。

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特撮は見世物よりドラマを支える位置へ置かれた。銀行強盗の謎を警察と記者が追い、水野が自ら正体を明かしたところで、ガス化の映像が犯罪の仕組みと愛情の異常さを同時に示す。本多猪四郎公式の制作写真解説も、特撮が本編を支える位置へ回った作品と説明している。効果の量ではなく出す場所が、水野の告白を大きな転換点にした。

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撮影した煙を光学作画で人型へ変えた。光学作画を担当した飯塚定雄によれば、スタッフが撮った煙の映像を素材にし、そこから人の形が読み取れるよう加工した。スタッフ欄には光学撮影の荒木秀三郎、合成の向山宏らも記されており、気体化は撮影素材と光学処理をつなぐ工程だった。実写の偶然性と作画による制御を重ね、輪郭のある気体を作ったのである。

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効果担当者は完成した変身人間映画を嫌っていた。怪獣や宇宙人より、人間の身体が液体や気体へ変わる映像の方が生々しく、子どもへ与える印象にも抵抗があったという。それでも観客を驚かせ、感情を動かすために現実らしく見せるのが仕事だった。技術的成功と作り手の好みが一致しない、率直な回顧である。

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水野の身体が消え、衣服だけがゆっくり崩れる場面には物理的な仕掛けが使われたと伝えられている。土屋嘉男から型を取った空気入りのゴム人形を衣装の中でしぼませ、内部に仕込んだドライアイスを足元のぬるま湯へ落とす。さらにピアノ線を緩めながら人形と衣服を下ろし、襟や袖から煙が漏れる速度を合わせたという。衣服の重さと煙を同時に残す方法だった。

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「情鬼」のために舞踊専門スタッフを置いた。片山貞一が詞、杵屋勝四郎が曲、堅田喜四郎が作調、若柳美東理樹が振付を担当した。音楽全体は宮内国郎が受け持つ一方、クライマックスの舞台には邦楽と日本舞踊の専門スタッフが別に置かれている。一つの劇中公演のために、音と言葉と所作を分業で組み立てたのである。

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日本版の序盤は、犯人の姿も侵入方法も分からない銀行強盗を警察と記者が追う。米国公開版は約11分を削り、水野自身の語りと回想を軸にして、彼がガス人間であることを早い段階から示した。捜査の寄り道や人物描写も整理され、観客は犯人を推理するより、異形になった男の運命を先に知る。謎解きから怪物の告白へ、同じ撮影素材の入口を変えた再編集である。

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米国版は宮内国郎の音楽を別作品の曲へ差し替えた。宮内国郎の劇伴の大半が外され、ポール・ソーテルの『ハエ男の恐怖』、ヒューゴー・フリードホーファーの『黒船』、リー・ハーラインの『東京暗黒街・竹の家』から音楽が移された。藤千代の舞踊を支える邦楽まで管弦楽へ変わり、日本舞踊と怪奇SFの接点が別の音で聞こえる版になった。

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英語版で水野を吹き替えたジェームズ・ホンは、ただ恐ろしい怪物の声を作ろうとはしなかった。完成映像を見て感情を読み取り、水野を同情できる人物と捉え、空洞のように響きながら耳に残る声を選んだ。オーディションを経て起用され、本人によれば通常の廉価な吹替より時間をかけて収録した。人間だった男の寂しさを、別言語でも消さない演技だった。

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ジェームズ・ホンは1990年頃、スタジオか路上で突然呼び止められた。その人物は、土屋嘉男が水野の英語版を高く評価し、ホンへ感謝を伝えたがっていると話したという。吹替では元の俳優を満足させることが難しいため、ホンはその伝言を特にうれしく感じた。本人同士が直接会った記録ではないが、約30年後に届いた声の返事として残る逸話である。

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国内Blu-rayには、藤千代を演じた八千草薫の音声コメンタリーが収録されている。さらに日本語モノラル、2001年版5.1チャンネル音声に加え、宮内国郎の劇伴を独立して聴けるBGMトラックも用意された。劇場予告編、静止画ギャラリー、東宝特撮の小道具資料も入り、俳優の記憶と音楽素材を同じ二枚組で保存している。

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2009年には、木村武の映画脚本を基にした舞台版がシアタークリエで上演された。後藤ひろひとが脚色・演出し、高橋一生がガス人間の橋本、中村中が歌姫CHIYO、伊原剛志が岡本警部補を演じた。水野久美はガス人間を生み出す佐野博士役で参加している。時代を現代へ移し、悲恋へコメディを混ぜることで映画をそのまま再現しない舞台にした。

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1963年公開を想定した未製作企画『フランケンシュタイン対ガス人間』では、水野は劇場の爆発を生き延びていた。彼は亡くなった藤千代を蘇らせるため、フランケンシュタインの怪物を墓から盗み出した科学者ギルドールを探す。ジョン・メレディス・ルーカスの着想を関沢新一が発展させたが、第1稿の段階で放棄された。愛する人の復活が、怪物同士を結ぶ動機になるはずだった。

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米国版ポスターは、ガス人間の正体を「人間か、それとも宇宙人か」と煽った。1992年にアラバマ州で結成されたサーフロックバンド、マン・オア・アストロマン?は、その宣伝文句から名を取っている。メンバーは宇宙から来た存在という設定で活動し、最初のアルバム名も同じ問いを受け継いだ。日本の怪奇SFが、三十年以上後のバンド名として米国南部に残った。

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2009年にまとめられたキネマ旬報の日本映画オールタイム投票では、本作が批評家選出の200本中65位に入った。巨大怪獣も都市破壊もない変身人間映画が、公開から約半世紀後に日本映画全体の順位へ選ばれた。特撮技術だけでなく、犯罪劇と悲恋を組み合わせた一本の映画として評価が残ったことを示す順位である。

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日本版の上映時間は、国立映画アーカイブの35ミリフィルム記録では91分、現在のBlu-ray仕様では92分である。米国劇場版は約81分まで短縮され、1964年に『妖星ゴラス』との二本立てで公開された。構成と音楽も変更されているため、海外の観客は単なる字幕版ではなく、一割以上短い再編集版から水野の悲劇に触れたのである。

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2026年版は物語とガス人間の設定を大きく作り替えたが、第1話の京子はテレビ局へ入る前に胸元へ指先を揃える。これは1960年作で水野がガス化するときのポーズと同じで、ジャケットへ手を差し入れる形まで合わせている。新版の京子とガス人間の関係を暗示しながら、変身の合図を別の人物の何気ない動作として受け継いだ。

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初公開時の題名は、通常の「第」ではなく異体字の「㐧」を使っていた。タイトルカードや宣伝物には「ガス人間㐧1号」、ポスターや台本には漢数字を用いた「ガス人間㐧一号」も見られる。国立映画アーカイブの所蔵記録は複数の題名を併記し、現在の東宝公式商品ではガス人間第一号を採用している。検索時には三つの表記を使い分ける必要がある作品である。

情報不足・要確認
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未制作企画や派生案の話から、『ガス人間第一号』には完成済みの続編がどこかに残っているように語られることがある。現時点で確認できるのは企画・構想レベルの情報で、完成フィルムの存在とは分けて扱う必要がある。

裏取り強め
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未確認・噂寄り
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