『フランティック』パリのクラブを灰皿まで再現し、本物の常連客も連れてきた
『フランティック』で再現されたパリのクラブには、内装だけでなく、その店にいた人々も参加していました。当時の経営者ユベール・ブコブザは回想録で、灰皿までそろえ、スタッフと常連客の一部もエキストラにしたと記しています。[1]
本物の店へ撮影に行った、という話とは少し違います。レストランを含む店の空間そのものを、ブローニュの撮影所に作り直していたのです。
・映画の店の後ろに、実在のLes Bainsがある
ポランスキーは公開当時の取材で、劇中の「Blue Parrot」は「Bains-Douches」を再現したセットだと説明しています。ホテルのロビーや屋上、室内も、同じくブローニュ撮影所に建てたと話していました。[2]
一方、ブコブザは店を運営していた側から、その再現の細かさを振り返ります。灰皿のような小さな物まで合わせた、という回想です。[1] 監督が語るセットの名前と、経営者が覚えている店の細部が、ここでつながります。
・家具だけでなく、そこにいる人も再現した
クラブの雰囲気は、壁紙やテーブルだけでは決まりません。そこで働く人がどう立ち、常連客がどこへ座るかでも、見える空間は変わります。
ブコブザが挙げるスタッフと常連客の参加は、その点で面白い工夫です。[1] 全員が店の関係者だったという意味ではありませんが、建物を模した場所へ、本物の店を知る人々も入っていたのですね。
・観光絵はがきとは違うパリ
ポランスキーが求めたのは、米国映画でおなじみの観光名所だけで出来たパリではありませんでした。監督は、周辺の道路や、通常は取り上げられない街の側面も見せたかったと説明しています。[2]
そのための映画で、実際の街と撮影所のセットが組み合わされています。見慣れたクラブを灰皿まで再現し、そこにいた人まで連れてくる。主人公には落ち着かない異国の夜でも、画面の背景では、土地を知る側の具体的な記憶が使われていました。