主な参考資料
- AFI
- The Guardian
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2007年制作。日本で流通する約188分版は、英国では187分2秒の長尺版としてホームメディア/VOD向けに分類された系統であり、同年に劇場公開された110分25秒版とは別に扱うべき作品である。 企画は、Powerのジャスティン・ボドルがリチャード・ドイルの小説をオプションしたことから始まり、限られた予算のなかで英国、カナダ、ハンガリー、南アフリカの撮影費を比較した末、ケープタウンを主な制作拠点に選んだ。 水の場面は屋内外の水槽、ダンプタンク、ウェーブキャノンで実写効果を作り、視覚効果班は実写やミニチュアの水をCGと混ぜる方針を採った。 The Numbersは製作費を2,400万ドル、海外興収を408万4,232ドルと記録するが、この数字は短縮劇場版と長尺版を分離した188分版単独の成績ではない。 2008年5月、ITV1で二部版が放送された際、初回は720万人、視聴率シェア30%を記録した。 ロンドンを沈める映像の前に、作品の長さを市場ごとに上げ下げする必要があった――配給上の水位管理まで含めて、この映画の災害である。
プロデューサーのジャスティン・ボドルは、テムズ・バリアを高潮が越えた場合のロンドンを描くリチャード・ドイルの小説『Flood』の映像化権を取得した。ボドルと共同プロデューサーのピーター・マカリースは、『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)や『タワーリング・インフェルノ』(1974)を好みながらも、『デイ・アフター・トゥモロー』(2004)の模倣にはせず、災害に直面する家族や行政の判断を英国側から描く方針を立てた。
トニー・ミッチェルが監督に選ばれた背景には、テレビ映画『スーパーボルケーノ』(2005)の実績があった。ミッチェルによれば同作は約300万ドルで作られたが、制作陣は5000万ドル規模の映画に見えると評価していた。本作でも限られた予算で都市規模の災害を成立させ、アメリカ映画の単純な複製にしないことが求められた。
制作陣は英国、カナダ、ハンガリー、南アフリカで撮る場合の費用を比較し、最も高かった英国を外してケープタウンを主要撮影地に選んだ。ロンドンの写真と、ロンドンに見立てられそうなケープタウンの写真を区別せず出資者へ送ったところ、出資者は両者を見分けられず、「ロンドンの場所は良いのでケープタウンの候補も見せてほしい」と返答したという。
本作の主要撮影は南アフリカで11週間行われ、ロンドンの実景撮影にはさらに2週間を使った。ケープタウン側では工業施設や建物、巨大な水槽をロンドンの地下鉄、テムズ・バリア周辺、浸水した街路へ作り替え、実際のテムズ川とバリアでも必要な素材を撮影した。
水が登場する27のセットを撮るため、制作陣は用途の異なる4基の水槽を用意した。屋内の一基は俳優とスタッフが腰まで水につかる場面、別の屋内水槽は水中撮影、屋外水槽はテムズ・バリアの桟橋から飛び込む場面やスコットランドの桟橋崩壊に使った。四つ目にはインド洋沿岸の潮だまりを利用し、浸水したシェパーズ・ブッシュの通りを作っている。
冒頭で祖母の家へ水が押し寄せる場面では、窓側から2万リットル、扉側から2万リットル、合計4万リットルの水を一度に流した。扉のすぐ後ろには祖母役またはスタント担当者が立つため、特殊効果班とスタント班は、扉が開く瞬間と放水のタイミングを細かく合わせた。
スコットランドのウィックで巨大な波が桟橋を壊す場面では、波浪砲に入れた1000リットルの水を8〜9バールの圧力でセットへ撃ち出した。特殊効果班が作った実写の水しぶきと破壊を土台に、VFX監督マリオ・ラキエーレが波の高さを約6メートルへ拡張している。
ブルースクリーン前で波を避ける俳優には、完成後の水の動きが見えない。VFX班はプレビジュアライゼーションと呼ばれる粗い3Dアニメーションを作り、波がどちらから来るか、二台の車がどう跳ね返り、最後に俳優へ向かうかを撮影前に示した。VFXの準備には約10週間、撮影後の仕上げには半年から1年を見込んでいた。
VFX監督マリオ・ラキエーレは、水や煙のように動きを予測しにくい自然現象をCGだけで作ることを避けた。速度を変えて撮影した実物の水、縮小模型へ流した水、CGで作った波を重ね、ロンドンの実景へ合成している。実写の不規則な形を残すことが、都市全体を覆う水の基礎になった。
ホワイトホールの危機管理司令室COBRAが浸水した後も政府側の物語を続けるため、美術班は架空の移動司令部「COBRA 2」を設計した。複数のトラックが到着すると油圧装置で側壁が開いて屋根になり、内部にはコンピューター、照明、発電機を備える。閣僚の車両がそのまま入り、浸水前と同じ会議机を使える巨大セットだった。
美術監督ジョナサン・リーは、テムズ・バリアの水門だけでなく、河床下に隠れた機械部分まで調べた。そのうえで本作では、中央水門が途中で動かなくなり、引き潮に合わせて排水できない設定へ変更している。実在施設の構造を土台にしながら、終盤の作戦は映画のために大きく脚色された。
本作は英国、カナダ、南アフリカの共同製作として、各国スタッフが一定の比率を満たすように編成された。撮影監督にはカナダのピエール・ジョドワンを迎え、ジョドワンが高精細デジタル撮影の経験を持っていたことから、全編をHDで撮る方針を選んだ。国籍の条件を満たしながら、経験に応じて美術、衣装、編集の責任者を配置している。
テムズ・バリアの運用責任者サムを演じたジェサリン・ギルシグは、水槽撮影に備えて初めてスキューバダイビングを習った。本人は水泳が得意ではないと話しており、安全訓練を受けたうえで、実際の水圧に抗う演技へ参加した。撮影の合間は濡れたまま待つため、寒さの方がつらかったという。
科学者レナードを演じたトム・コートネイも、水中を泳ぐ場面のためにスキューバダイビングを習った。南アフリカで約12週間を過ごし、水槽や工業施設を使った撮影へ参加する一方、実際のテムズ川とテムズ・バリアでも撮影した。ケープタウンの設備と美術がロンドンに見えるため、観客には撮影国を見分けられないだろうと話している。
副首相を演じたデヴィッド・スーシェは、本作の出来事がスコットランドの暴風からロンドン水没まで約15時間で進むと捉えた。撮影は数週間に及んでも、登場人物には休む時間がないため、異なる情報を次々に受け取り、判断が追いつかなくなる速度を各場面に保った。
本作には、英国で二部構成として放送された約187分の長尺版と、110分25秒の劇場版がある。日本で『デイ・アフター 首都水没』として流通する約188分版は長尺版に近い。版によって約77分の差があるため、視聴した商品や配信によって人物描写の量が大きく異なる。
英国で二部版がITV1により放送されたのは、劇場公開の翌年にあたる2008年5月だった。第一部は720万人が視聴し、同時間帯の視聴率シェア30%を記録している。長尺版は劇場版とは別に、テレビの大型災害ドラマとして多くの視聴者へ届いた。