主な参考資料
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2005年公開。ドイツ映画『タトゥー』(2002年)を見たディズニーとプロデューサーのブライアン・グレイザーがロベルト・シュヴェンケに目を留め、本作は彼のハリウッド長編第1作となった。脚本はもともと男性を主人公にした、米国同時多発テロ以前の航空機テロ物だったが、シュヴェンケは物語の焦点を「娘は本当に機内にいたのか」という疑念へ移し、主人公を母親に変更してジョディ・フォスターを迎えた。舞台となる2階建て旅客機は、実在機では物語上必要な改造も撮影も難しいため、エアバスの大型機構想を参考に架空の機体として設計され、監督は観客の空間感覚を保つため、飛行中の外観ショットをほぼ排してカメラを機内へ閉じ込めた。貨物室のセットでは、カメラを入れるたびに壁や天井を外して組み直す必要があり、丸一日で3カットしか撮れない日もあったという。The Numbersが掲げる製作費は5,500万ドル、Box Office Mojo集計の世界興収は約2億2,339万ドルである。一方、全米の客室乗務員団体は乗務員を侮辱的に描いたとして不買運動を呼びかけ、監督は台詞の95%を実在の乗務員から聞いた内容だと反論した――架空の旅客機を造っても、現実の職業団体との衝突までは機外へ追い出せなかったのである。
初期稿は9.11以前に書かれ、旅客機内のテロや生物兵器を軸にしていた。シュヴェンケはそのままの「飛行機テロ映画」にはせず、娘が本当に搭乗していたのかという疑いへ物語の重心を移した。脚本家ビリー・レイも犯罪計画を仕組みから組み直し、乗客の恐怖と疑心を前面へ出した。
カイルは男性主人公として書かれていたが、企画途中で女性へ変更され、フォスターはまだ男性用だった脚本を読んで出演を決めた。フォスターは、家庭から離れがちな父親より母親を航空機設計者にした方が母娘の結びつきと周囲の偏見が自然になり、物語が豊かになったと振り返っている。
シュヴェンケは27歳の時にがんと診断され、後に誤診だったと分かった。その経験から、世界は一瞬で崩れ、正常と思っていた日常や自分の制御感覚が消えうると知ったという。夫を亡くした直後に娘まで見失い、周囲から自分の記憶を疑われるカイルの状況には、この個人的な感覚が重ねられている。
劇中のAALTO Air E-474は実在しない架空機である。シュヴェンケは二階建てのエアバスA380を主な発想源にしつつ、特定メーカーの機体とは呼ばず、747級の巨大旅客機の印象も混ぜた。目的は近未来SFではなく、ひとりの子供が機内で本当に見つからなくなるほど広く複雑な舞台を成立させることだった。
E-474の機内はロサンゼルスのスタジオに16週間をかけて建設された。客室だけでなく階段、貨物室、機械区画まで連続する巨大セットで、300人以上のエキストラを収容した。撮影監督ミヒャエル・バルハウスの照明を組み込む一方、壁を外して自由に撮ることより、実際の筒状空間にいる感覚を守る設計が優先された。
シュヴェンケは、取り外せるセット壁があってもカメラを機体の外側へ置かないと決めた。観客が機内の距離と圧迫感を信じ続けられるよう、壁を透過するような視点を避けたのである。飛行中の機体を外から見せるショットも、酸素マスクが落ちた後に「まだ墜落していない」と説明するための一度だけだった。
監督が最も苦労したのは、客室ではなく貨物室の撮影だった。狭い空間へ配管や機械を詰めたため、カメラの位置を変えるたびに壁を外し、時には天井を持ち上げてから元へ戻す必要があった。シュヴェンケによれば、この作業のため1日で3ショットしか撮影できない日もあった。
約300人の乗客役は、撮影期間中ほぼ同じ座席に座り続けた。背景の人物にも、眠る、読む、飲むといった行動の連続性が必要で、エキストラ自身が前のテイクの動きをよく覚えていたという。毎日同じ巨大セットへ戻ることで、出演者と背景役の間には小さな共同体のような関係も生まれた。
音響班はタービン、油圧サーボ、機体のうなりを実機から録音し、E-474を「登場人物」のように響かせた。さらに娘ジュリア役のうめき声や囁きをサンプラーとボコーダーで加工し、機械音へ気づかれないほど薄く混ぜた。機体がカイルへ話しかけるように聞こえるが、それが現実か心理かは断定できない音にしている。
機内劇の大部分はロサンゼルスのセットで撮られたが、物語の出発点となる冬の街はベルリンで撮影された。製作資料ではベルリンで約2週間、ライプツィヒ空港で3日間撮影したとされる。ロングビーチ空港とモハーヴェ周辺の空港も使い、都市、空港、架空機内部を別々の場所で組み合わせた。
娘が最後に口にする「Are we there yet?(もう着いた?)」は、脚本の初期段階から決まっていた台詞ではない。シュヴェンケによれば、激しい出来事をくぐり抜けた直後に、子供らしい一言で観客を笑わせるため撮影現場で加えた。結末の意味を説明する台詞ではなく、張り詰めた空気をほどく役割を持つ。
窓に残る印は、『バルカン超特急』への意識的なオマージュ。シュヴェンケは、列車から老婦人が消えるヒッチコックの『バルカン超特急』(1938)に由来すると明言し、脚本家たちも同作を見ていたと説明した。本作は列車を巨大旅客機へ置き換えた、現代的な「消失もの」として設計されている。
客室乗務員フィオナ役のエリカ・クリステンセンらは、非常時の責任や乗客対応を含む航空訓練を受けた。航空保安官カーソン役のピーター・サースガードも、実在の航空保安官たちと約1時間半会い、目立たず乗客を観察する仕事の感覚を聞いた。衣装や装備だけで職業らしく見せず、閉鎖空間での判断と態度を役作りへ取り込んだ。
機長役のショーン・ビーンは、自分自身も長い間飛行機を怖がっていたと語っている。撮影前に操縦室シミュレーターへ入り、現役の機長から機体の仕組みを教わったことで、何が起きているか分からない不安が薄れたという。サースガードも別の理由で飛行を苦手としており、巨大な機内セットでは恐怖を抱える俳優が二人そろった。
フォスターは、自分の幼い子を人混みで見失ったことがある。時間にすれば1分にも満たなかったが、周囲の人々へ子供の姿を説明して助けを求める間、現実が崩れるほどの恐怖を感じたという。本作の状況とは規模が違っても、誰にも自分の子を見つけてもらえないカイルの切迫感を理解する具体的な手がかりになった。
公開時、APFA、AFA、TWU Local 556の客室乗務員3団体は、乗務員を無愛想で無責任に見せ、犯罪への加担まで描いたとしてボイコットを呼びかけた。対象となる会員は23社・8万人超と報じられた。ディズニーは現実の乗務員を傷つける意図はないと回答し、シュヴェンケも乗務員への取材を重ね、観客はフィクションと現実を区別できると反論した。
The Numbersの集計では製作費は5,500万ドル、北米興収は8,970万6,988ドル、世界興収は2億1,439万2,904ドルである。全米では3,424館で公開され、初週末2,462万9,938ドルで1位、翌週も1,480万5,739ドルで首位を守った。ただし世界興収はBox Office Mojoの集計と差があるため、単一の確定値ではなくThe Numbers掲載値として扱う。
「共用されていた旅客機の計器盤が『キャスト・アウェイ』で壊されたため、本作は操縦席を一から作った」という話がIMDbにある。だが、本作の監督取材や確認できた製作資料にはこの経緯がなく、『キャスト・アウェイ』側からも裏付けを得られなかった。E-474が架空機なので専用の操縦席を設計したこととは別の説であり、現時点ではガセビア候補である。
IMDbには「本作がTouchstone Pictures最後のVHS発売作品」という投稿がある。しかし、どの国の発売を指すのか、販売用かレンタル用か、Touchstoneの名義をどう数えるのかが示されていない。公式カタログや同時代の発売一覧から最後と確定できなかったため、媒体史としては面白いが、現時点ではガセビア候補に留める。
「6人の客室乗務員がボイコット」ではなく、3団体が8万人超へ呼びかけた。呼びかけたのはAPFA、AFA、TWU Local 556の3団体で、対象会員は23社・8万人超だった。抗議自体は実在するが、人数として読むと誤りであり、「複数の客室乗務員団体」と訂正する必要がある。
「エリカ・クリステンセンは衣装のハイヒールを嫌い、上半身だけのショットでは脱いでいた」というIMDb投稿がある。本人の長い取材では航空訓練や巨大セットについて語っているが、靴の逸話は確認できなかった。画面に足が映らないことだけでは撮影方法を証明できないため、本人や衣装班の証言が出るまではガセビア候補である。