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1997年公開の、第50回カンヌ国際映画祭の開幕作品となったリュック・ベッソン監督のフランス製英語SF大作である。原型はベッソンが15歳頃から書いていた物語で、約20年かけてジャン・“メビウス”・ジローやジャン=クロード・メジエールらフランス漫画界の視覚を映画へ持ち込んだ。撮影は1996年1月から6月までパインウッド・スタジオの9つのステージで22週間行われ、当時の『American Cinematographer』は製作費7,500万ドルで欧州史上最高額の製作と報じ、現在のThe Numbersは9,500万ドルと記録している。Digital Domainでは約85人の模型スタッフと85人のアーティストが、220以上の視覚効果ショットを処理し、ベッソン自身も本編のカメラを操作した。世界興収は約2億6,389万ドルに達し、北米分は約4分の1にすぎないため、いかにもフランス的な宇宙絵巻が世界市場で回収する構図となった。少年の空想帳を欧州最高額級の請求書へ育てたのだから、夢を諦めなかった代償はかなり具体的である。
リュック・ベッソンは16歳のとき、映画化の企画ではなく日常から離れて遊ぶために、この物語を書き始めた。未来都市、五元素、さまざまな異星種族を長年かけて増やし、監督として実績と製作規模を得てから映像化へ進んだ。約20年の間に発達した模型撮影、デジタル合成、CGも構想へ取り込まれ、十代の空想が1990年代の技術見本市のような映画へ変わった。
参考情報:公開資料
初期稿のコーベンはロケット工場で働く人物だった。ジャン=クロード・メジエールが未来都市用に空飛ぶタクシーと警察車を描くと、ベッソンはその発想を気に入り、主人公の職業を運転手へ変更した。コンセプト画は背景を飾るだけでなく、リールーが車へ落ちてくる出会い、都市を縦に走る追跡、コーベンの生活苦まで脚本へ持ち込んだ。
参考情報:VFX・撮影専門媒体
23世紀のニューヨークは、『ブレードランナー』以後に定番化した暗く雨の多い終末都市を避けて設計された。VFX監督マーク・ステットソンは、空飛ぶ車を広い昼光の中へ出し、より気まぐれで楽観的な未来を目指したと説明している。黄色いタクシー、原色の広告、食事を売る空中屋台まで、色彩は物語の危機とは別に都市の日常が続いていることを示す。
参考情報:映画専門誌(米)
220を超えるVFXショットのため、Digital Domainでは同時期に約85人の模型制作者と約85人のデジタル・アーティストが作業した。宇宙船、未来都市、空中交通、惑星規模の「悪」は一つの技法へ統一せず、大型模型、実写火薬、マット画、CGを場面ごとに組み合わせた。デジタル技術の新しさだけでなく、模型工房を同じ規模で動かしたことが画面の密度を支えた。
参考情報:映画専門誌(米)
未来のニューヨークは1/24スケールで作られ、模型ビルは24〜30棟、最大で高さ約7.3メートル、奥行き約12.2メートルに達した。カメラに近い建物は物理模型として照明を当て、ステージの外へ続く街路は二次元のマット画で延長し、都市全体をCGにしたショットは約5つに抑えた。巨大な模型を基礎にしたため、窓や壁面の汚れが空中追跡でも実在感を保っている。
参考情報:映画専門誌(米)
模型班は同じビルを固定したまま使わず、撮影のたびに外壁の細部を付け替え、塗装を変えて別の街区へ作り直した。24〜30棟という模型の数をそのまま画面の限界にせず、カメラ角度、看板、壁面の汚れ、マット画の遠景を入れ替えて巨大都市へ増殖させた。物量を節約する工夫が、逆に建物ごとの生活感を増やしている。
参考情報:VFX・撮影専門媒体
空中追跡はPrismsというソフトで簡易都市を組み、カメラの動きと車の流れを先に決めた。建物を色分けし、模型ステージからはみ出す部分をCGやマット画へ割り振ったうえで、データをモーションコントロール撮影と本番CGへ引き継いだ。Digital Domainにとって初の大規模プリビズであり、完成映像の工程そのものを早期に接続する試みだった。
参考情報:映画専門誌(米)
模型中心の空中追跡には、CGで作った警察車の短いテストショットが混ざっている。Digital Domainは車両を完全CGで扱えるか試し、その一台を錐揉み回転させた。動きが気に入られたため、技術確認用だった映像は削られず本編へ入り、整然と流れる交通の中で一瞬だけ模型では難しい回転を見せる。
参考情報:VFX・撮影専門媒体
モンドシャワン船の墜落では、船体模型そのものを爆破していない。幅約15メートル、奥行き約38メートルの地面へ45〜50基の火薬を円形に仕込み、約100コマ毎秒で撮った大爆発へ模型を合成した。船体表面を走る小爆発は別撮り素材と火薬ライブラリーから追加し、一度きりの破壊撮影に頼らず長い崩壊を作った。
参考情報:映画専門誌(米)
赤い球体の「悪」は、フラクタルで作った溶岩と地殻を二次元でねじり、RenderManのシェーダーへ渡す三段階で作られた。工程の再設計により、1フレーム6時間だった計算は約30分へ短縮された。さらにミサイルを受けた成長は球体を単純拡大せず、数式で輪郭を不均一に膨らませ、怒って形を変える生物のように見せている。
参考情報:映画専門誌(米)
フロストン・パラダイスは全長約2.4メートルの模型で、通常照明の映像とは別にUVバックライトを使って輪郭用マットを撮影した。この方法なら反射の光が船体の外へにじむ部分も残せる。さらに青い塗装は露出を大きく上げても白く飛ばず、むしろ深く発色したため、水の惑星に浮かぶ巨大客船の人工的な輝きへ調整された。
参考情報:映画専門誌(米)
観客の背後からディーバを見る画はロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスで撮り、正面の歌唱はパインウッドのグリーンバックで撮影した。巨大窓、惑星、鉄骨アーチは二次元マット画とCGで追加された。客席と舞台が同じ場所に存在しないため、照明、視線、カメラ移動を合わせ、実在の劇場より大きな宇宙船内ホールへ組み替えている。
参考情報:映画専門誌(米)
ディーバの光沢ある青い衣装はグリーンを反射し、輪郭を抜く作業を難しくした。現場では側面光を足して色かぶりを抑え、背景に卓球球を貼って追跡点を増やした。合成時には台車の移動データを初期Nukeへ読み込み、鉄骨アーチの傾きだけでなく舞台へ落ちる影までカメラ移動に合わせた。衣装の問題が、二次元合成へ三次元の視点を持ち込む解決策を生んだ。
参考情報:映画専門誌(米)
エリック・セラはディーバ・ダンスを、人間が実際に歌えるのは約60%だろうと考えて作った。ところがソプラノのインヴァ・ムラは約85%を歌い、残りを音程補正と編集でつないだ。冒頭にはドニゼッティ『ランメルモールのルチア』の「狂乱の場」を置き、古典的な技巧がそのまま電子的な未来声へ崩れていく構成にした。
参考情報:公開資料(韓)
エリック・セラは、それまでのジャズを交えた作風を大作で繰り返すことを避けた。正式な音楽教育を受けていなかったため、約3年間、ドビュッシー、ストラヴィンスキー、バルトーク、ラヴェルらの総譜を聴きながら読み、管弦楽の構造を学んだ。その訓練が、古典的な宇宙の壮大さと電子音、異国的なリズムを同じ映画の中へ置く土台になった。
参考情報:公開資料(韓)
再生直後のリールーを裸にせず、同時に科学者が注射や検査をしやすい服として、ミラ・ジョヴォヴィッチは身体の要所だけを帯で覆う案を出した。ベッソンがその発想をジャン=ポール・ゴルチエへ渡し、白い包帯衣装へ発展した。露出の多さを先に決めた衣装ではなく、再生直後の実験体へ何を着せるかという機能上の問題から形が決まった。
参考情報:公開資料
暗い地毛の根元を毎週漂白して蛍光オレンジへ戻した結果、ミラ・ジョヴォヴィッチの髪は薬剤が重なった部分から束で抜け始めた。地毛で撮れたのは序盤で、制作側は途中からリールー用のウィッグを作った。切替点を劇中のシャワー後へ置いたため、髪の質感が変わっても物語上の変化としてつながっている。
参考情報:公開資料
衣装は端役まで撮影前に確認された。ジャン=ポール・ゴルチエは主要人物だけでなく端役の衣装まで撮影前に確認し、軍人、客室乗務員、富裕層、メディア関係者を服装で分けた。奇抜な一着を目立たせるのではなく、背景の群衆全体を使って23世紀の消費社会を作っている。
参考情報:YouTube(米)
クリス・タッカーは、マイケル・ジャクソンとプリンスの要素を混ぜてルビー・ロッドを作った。高い声と細かなリズム、絶えない身振り、観客を支配するポップスターの態度を一人へ集めている。完成したルビーは単なる司会者ではなく、危機の最中にも放送を止められない23世紀の巨大メディア人格になった。
参考情報:新聞社(米)
ルビー・ロッド役の初期候補はプリンスだったが実現せず、クリス・タッカーへ渡った。タッカーとゴルチエは、プリンスが網状で身体の毛が見える衣装案に抵抗した経緯を語っている。一方でベッソンは日程上の不一致も理由に挙げており、辞退理由は一つに確定していない。タッカーは完成衣装を着たことで役への恐れが消えたと振り返っている。
参考情報:資料・アーカイブ
ベッソンはゲイリー・オールドマンの監督作『ニル・バイ・マウス』の資金調達を助け、一部地域の権利と引き換えに製作を支えた。その返礼としてオールドマンは本作の脚本を読まず出演を決め、監督作の編集を中断してゾーグを演じ、撮影後に編集へ戻った。画面を支配する悪役は、別の小規模映画を完成させるための製作上の関係から生まれた。
参考情報:公開資料
ゲイリー・オールドマンは後年、本作を好きかと問われて明確に否定した。出演は『ニル・バイ・マウス』を支えたベッソンへの恩返しだったと説明し、作品への共感から選んだ役ではないとしている。強烈な造形と演技でゾーグが代表的悪役の一人になった一方、本人は長く悪役へ固定された時期の仕事として距離を置いている。
参考情報:公開資料
マンガロワの目を覆うゴーグルは、軍事的な外見を強める一方、俳優の目周りの特殊メイクを省ける形になっている。大勢の異星人を同じ場面へ出す場合、顔全体を仕上げるより装着時間を抑えられる。画面と制作工程が一致する具体的な候補だが、ニック・ダッドマン本人が時短目的を語った資料は未確認である。
参考情報:VFX・撮影専門媒体
1914年の神殿外景は、モーリタニアの町から約160キロ離れた場所で約9日間撮影された。現地へ水をトラックで運び、乾いた湖床に立つ巨大な岩へ入口を描いて神殿外観に変えた。内部は英国のセットへ切り替わり、そこへ8フィートの宇宙船模型とNASA写真を基にした地球のマット画が加えられている。
参考情報:VFX・撮影専門媒体
俳優を撮る主要撮影が約105日だったのに対し、模型を中心とするVFX撮影も約105日続いた。宇宙船の飛行、墜落、未来都市の街路、空中追跡をモーションコントロールで撮り、さらにデジタル素材と合成した。実写本隊が終われば画面がほぼ完成する作品ではなく、模型班が同じ長さの撮影をもう一度走った映画である。
参考情報:VFX・撮影専門媒体
大量の合成に対応するため、ベッソは従来のアナモフィック撮影からSuper 35へ切り替えた。Arri 535Bに加え、試作段階から量産初期の435高速カメラも使い、2〜150コマ毎秒で前後どちらへ回してもマット合成に耐える安定した素材を得た。通常場面にはコダック5293、グリーンバックには粒状性を抑えた5248を使い分けている。
参考情報:映画専門誌(米)
主人公コーベンと悪役ゾーグは、同じ目的物を追いながら一度も対面せず、台詞も交わさない。フロストン・パラダイスではコーベンがエレベーターから出た直後にゾーグが乗り込み、数秒の差ですれ違う。悪役を倒すことではなく元素をそろえることが主人公の目的なので、アクション大作で定番の一騎打ちは物語から外されている。
参考情報:映画データベース(米)
1997年の第50回カンヌ国際映画祭は、本作をコンペティション外の開幕作品に選んだ。英語で撮られ、ブルース・ウィリスを主演に据えたフランス製SF大作を、国際的な祝祭の入口へ置いたのである。のちにフランスではセザール賞の監督、撮影、美術を受賞し、娯楽大作の規模と国内映画としての評価を両立した。
参考情報:公式資料
『アンカル』のアレハンドロ・ホドロフスキーとメビウス側は、垂直都市や漫画的な未来像の類似を理由にベッソと製作会社を提訴した。請求は認められず、類似は限定的で、メビウス自身が本作の美術へ正式に参加していた点も考慮されたと報じられている。創作への影響を認めて招いた相手と、完成後に法的な境界を争うことになった事例である。
参考情報:公開資料
撮影当時、ベッソンのパートナーで幼い娘の母でもあったマイウェンは、ディーバ・プラヴァラグナを演じた。二人の関係は1996年に終わり、ベッソンは現場で主演のミラ・ジョヴォヴィッチと交際を始め、公開年の末に結婚した。マイウェンは破局が突然だったと回想し、ジョヴォヴィッチも現場で恋に落ちたと後年語っている。
参考情報:公開資料(仏)