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2013年公開。『第9地区』で注目されたニール・ブロムカンプが脚本・監督・製作を兼ね、マット・デイモンとジョディ・フォスターを迎えて、前作より大幅に規模を広げた長編第2作である。荒廃した未来の地球にはメキシコ市の実景を使い、製作部から止められながらも巨大廃棄物処分場ボルド・ポニエンテへ入り、作り物では出せない汚染と物量を画面へ持ち込んだ。一方、富裕層の宇宙居住区はシド・ミードのデザインを足場にImage Engineが構築し、複雑なカットでは3兆を超えるポリゴンを扱うほど、デジタル側へ途方もない細部を積み上げた。貧困の現場は本物のごみ捨て場で撮り、富裕層の楽園はコンピューター内で豪華に建てたのだから、作品が告発する格差は制作工程にまで妙に律儀に再現されたのである。
『エリジウム』の脚本づくりは、美術から物語へ戻る往復運動だった。ブロムカンプは執筆中からウェタ・ワークショップに、まだ文章化していない場面や技術まで描かせ、気に入った図像を脚本へ取り込んだ。絵が脚本を先導する往復を一年以上続け、マット・デイモンへ渡した分厚い企画本は完成作に近い世界をすでに持っていた。企画会議の順番まで逆転している。
マックス役の候補には、まずディ・アントワードのニンジャ、続いてエミネムの名があった。ニンジャは米国訛りの大作主演をためらい、エミネムはデトロイト撮影を条件にしたため、最終的にマット・デイモンへ話が渡った。配役の変化が映画の規模と都市まで変えたという経路で、デイモンは企画本を見て参加を決めたらしい。主演交代だけの話では収まらない。
荒廃した地球のロケ地には、メキシコシティ郊外の巨大ゴミ処理場が使われた。班は衛生検査で危険と分かった区域を撮影できる状態まで清掃し、約二週間にわたって撮影したという。汚れた未来を撮るため現実の現場を先に浄化し、ヘリの粉塵が舞う場面では出演者以外が防護マスクを着けた。安全な工程と完成画面がきれいに反転している。
マックスの外骨格は、俳優が一日着て走り回れる実物の装備だった。ウェタ・ワークショップは約八か月かけて75回の修正を重ね、金属に見えるピストン類を軽くし、総重量を約25ポンドへ抑えた。重機らしい見た目と衣装らしい軽さを両立したから、身体へねじ留めされたような痛々しさと生身の速度が同居する。見た目よりずっと運動向きの設計だ。
エリジウムの輪は、NASAのJPLへ相談してから形を固めたという。1970年代に提案されたスタンフォード・トーラス型の宇宙居住区を参照し、幅約2キロ、直径約40キロ、円周約125.6キロという内部寸法まで置いた。実在する構想を富裕層の城壁へ変換したため、巨大な人工物でも橋や都市の延長のような説得力が残る。妙に具体的な楽園だ。
宇宙から庭園へ滑り込む場面は、複数のVFX班がつないだ仕事だった。イメージ・エンジンが輪の梁や外殻、ハブを作り、ウィスキーツリーが地形、樹木、邸宅、水面を担当し、複雑な場面は3兆ポリゴン規模に達した。工学構造と造園を別の専門班へ分業し、リング完成には約一年を要したという。都市と庭が同じ生活圏に見える理由がそこにある。
地球側とエリジウム側は、カメラの動きまで別の世界として設計された。ブロムカンプは地球をほぼ手持ちで撮り、宇宙側ではテクノクレーン、ステディカム、ドリーで滑らかな移動を作った。階級差をカメラの歩き方へ埋め込んだため、揺れる地上から漂うような楽園へ切り替わるたび、誰が空間を支配しているかまで伝わってくる。カメラも階級を持っている。
撮影の大半はRED EPICとアナモフィックレンズで約3.3K収録し、最終的に4Kへ仕上げた。HDRxの二つの露出を残し、ACESとBaselightで撮影素材、各社のVFX、最終DIを同じ色の基準へ載せている。何百もの合成を一つの現実に見せる色管理が、砂埃の地球と白い楽園を分けながら、人物とCGの境目を消した。地味だが画面の土台になる仕事だ。
最終版のVFX数は、集計範囲によって822件または約870件と記録されている。イメージ・エンジンは複数社の素材を束ね、4Kで見える細部を同じ条件で確認するため、バンクーバー初とされる4Kレビューシアターまで整えた。4Kを上映規格ではなく制作中の検査環境にしたことで、リングの梁や小さなドロイドの機構まで途中から監視できた。解像度が現場の目になった。
レイヴン墜落の中核には、6分の1模型と長さ70〜80フィートの屋外地形がある。班は実物の芝や割れるガラスを仕込み、複数のRED EPICを72fps、一台を96fpsで回して、約40フィート毎秒で走る模型を一度だけ破壊した。撮り直せない一発の物理現象が、樹木、土、建物の崩れ方へ予測しきれない重さを残している。模型は待ってくれない。
レイヴン墜落の壊れ方は、模型撮影が先に決めた。翼が外れ、建物を抜け、地面へ転がる結果を撮ったあと、第一班が俳優の立つ実物セットへ残骸と損傷を配置したという。偶然を含む模型の破壊が実写側の設計図になったため、墜落中と直後の空間が自然につながる。壊れた模型が現場監督役を務めたわけだ。
レイヴンの低空飛行には、本物のヘリコプターが使われた。カメラの構図、速度、砂煙、草木の揺れ、演者や撮影者の反応を撮ってから、機体だけをCGの宇宙船へ置き換えたという。画面から消えるヘリが空気だけを残すから、CG機の重量感が地面と人の反応から立ち上がる。形より先に風を撮っている。
警備ドロイドは、灰色のスーツを着たスタントマンの演技を土台に作られた。イメージ・エンジンが人間を消し、686個の操作点を持つリグで動きを手付けし、背中のばねにはバイクの黄色いサスペンションまで参照した。人の演技を写し、現実の機械部品で無感情にする二段構えが、製品らしい冷たさを作っている。人間を通して機械を作る手順だ。
カーライル襲撃でドロイドが砕ける場面は、生身の初動から始まる。灰色スーツの演者をワイヤーで後方へ引き、空中と砂地で実火薬を連続させ、その上へ金属片、配線、火花、作動油のデジタル要素を重ねた。人体の引かれ方と現場の砂を爆発の芯にしたため、架空兵器の威力が周囲の地面と空気まで巻き込む。爆発にも下ごしらえがある。
未来のロサンゼルス空撮には、都市が過密化する道筋まで仕込まれている。インダストリアル・ライト&マジックは市の都市計画を調べ、将来建物が増えそうな位置を踏まえて街を拡張し、屋上用の小屋を10種類作った。混沌を成立させる都市の論理として、橋、足場、物干し、配管、空調まで生活の動線へ置いている。無秩序に見えて、かなり計画的だ。
エリジウムの庭園は、マリブの空撮を参照して組み立てられた。ウィスキーツリーは一本50万〜2000万ポリゴンの樹木を使い、邸宅、プール、バーベキュー設備、擁壁、草花まで手作業で整えた。自然を豪邸の所有物として造園したため、植物は豊かなのに野生味が薄い。緑まで管理された楽園だ。
カーライルの赤いシャトルには、ブガッティが初期デザインで関わった。車体塗装の艶や、ボンネット内まで整えた高級車の清潔さを未来の機構へ移し、墜落には約16分の1模型を砂へ引く120fpsの素材も混ぜている。高級車の美観を壊れる瞬間まで維持したため、埃だらけの地球で異物のように光る。未来の高級品にも壊れ方の作法がある。
管制室の表示には、メソッド・スタジオへ「1985年にこの映画を作り、未来を予想したらどうなるか」という指示が出た。琥珀色の粗い表示を発展させ、Houdini内で立体LEDの体積として組み上げている。過去が想像した未来を本作の現在にすることで、読みやすいのに現代のスマートフォンとは似ていない技術体系が生まれた。時代錯誤が未来味になる。
クロウが壁へ叩きつけられる場面には、俳優に見える全身ダミーが使われた。シリコーンの皮膚、割れにくい柔らかな歯、発泡材、金属骨格、重さを変える内部ウェイトを組み合わせ、毛も一本ずつ植えたという。人体の外見と再使用できる機械の耐久性を同居させた結果、予備を使わず最初の一体だけで激しい場面を撮り切れた。妙にタフな身代わりだ。
地球側で銃撃と火花を浴びる改造車の一台は、ニール・ブロムカンプの愛車だった。日産GT-Rを製作側が買い取り、荒廃した2154年の車両へ作り替えている。監督の愛車が世界観の中古部品になったため、滑らかなスポーツカーの面影と武装、汚れが一台の中でぶつかる。未来の生活が急に身近になる。
ライアン・エイモンにとって、『エリジウム』は初の長編映画音楽だった。ブロムカンプはユーチューブで本人の曲を見つけ、「これは君か」とだけ記したメールを送り、映像を見せる前から「暗闇」「光」「精神性」という抽象語で作曲を始めさせた。無名の一曲が大作の音響世界へ直結し、完成曲はアビー・ロード・スタジオのスタジオ・ワンで録音された。拾われ方まで映画的だ。
音楽と効果音は、撮影前から映画の周りに用意されていた。ライアン・エイモンは約80曲を書き、デイヴ・ホワイトヘッドは武器、乗り物、リングの音を特定ショットへ同期させず、独立した音の図書館として作った。編集が音を待つのではなく、先にある音から選ぶ工程だったため、粗編集の段階から固有の響きを置けた。音が先に世界を待っていた。
ソニー・ピクチャーズは、『エリジウム』をAuro 11.1とDolby Atmosの双方でミックスした最初の長編作品として発表した。宇宙船の通過やミサイルを前方だけに閉じ込めず、観客の周囲と頭上へ動かせる方式を同時に試している。階層化された世界を音場そのものにも立体化したため、地上から見上げる機体と楽園内部を移動する機械が、違う高さを伴って迫ってくる。音にも上下の格差がある。
クルーガーの声には、シャールト・コプリーが集めた具体的な手がかりがある。米国、東欧、英国などの案を試した末、ヨハネスブルグ南部の訛りと皮肉な笑いを選び、政治に利用された32大隊の歴史を人物へ重ねた。地域語と軍事史が反抗的な傭兵像を接続し、野外で肉を焼く姿にも当時の軍人写真を参照している。声ひとつにも土地の履歴が入っている。