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2008年公開。スティーヴン・スピルバーグが10年以上前に考えた着想を基にした企画で、当初は本人が監督する予定だったが、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』を優先してD・J・カルーソへ託した。長い開発期間のあいだに携帯電話、GPS、監視カメラが日常へ浸透し、カルーソはようやく技術が物語に追いついたと説明している。『ディスタービア』に続いてシャイア・ラブーフと組んだカルーソは、大規模なアクションが人物をのみ込んでゲームのようになることを最も警戒したという。製作費8,000万ドルに対し、世界興収は約1億8,059万ドルを記録した。未来の監視社会を待っていた企画は、十年寝かせているうちに、観客のポケットへ勝手に撮影装置が普及してくれたのである。
スティーヴン・スピルバーグが基本アイデアを考えたのは、公開の十年から十二年前である。D・J・カルーソは、当時なら携帯電話、GPS、監視カメラを横断して人間を追跡する展開が科学空想に見えすぎたと振り返っている。企画が長く眠る間に携帯端末と位置情報が日常へ入り、2008年には観客が長い説明なしで仕組みを理解できるようになった。映画の古びた端末類は、むしろ監視社会を描く企画が現実に追いつかれた時点の記録になっている。
参考情報:公開資料(仏)
スティーヴン・スピルバーグは当初、自分で監督する構想を持っていた。しかし『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』の制作と重なり、企画を別の監督へ託すことになる。決め手になったのは、D・J・カルーソが撮った『ディスタービア』の粗編集だった。スピルバーグは同作を完成前に見て監督を指名し、製作総指揮として残った。シャイア・ラブーフとカルーソの前作での組み合わせも、そのまま新企画へ持ち込まれた。
参考情報:新聞社(米)
初期稿のジェリーは30代であり、D・J・カルーソとシャイア・ラブーフはトビー・マグワイアらを配役候補として話していた。ところが脚本を詰めるうち、大学を辞め、定職に就かず、シンガポールやオーストラリアを旅しながら答えを探す行動は22〜23歳の人物に見えると監督は判断した。年齢だけを下げたのではなく、まだ進路を決め切れない若者として人物の輪郭を揃えたことで、前作では高校生を演じたラブーフを若い大人として起用できた。
参考情報:公開資料(仏)
ダン・マクダーモットがスティーヴン・スピルバーグの着想から物語と初期脚本を作り、ジョン・グレン、トラヴィス・ライト、ヒラリー・サイツが撮影へ向けて改稿した。完成版に四人の脚本名が並ぶのは、長く開発されてきた企画を2008年の端末や監視技術へ合わせ直した結果である。映画は一つの万能装置だけに頼らず、電話、GPS、交通信号、広告画面、荷物搬送設備を次々につなぐため、各見せ場が最終計画へ収束する構造の整理にも多くの書き直しが必要だった。
参考情報:新聞社(米)
目標は1970年代の政治スリラーだった。参考にしたのは『パララックス・ビュー』や『コンドル』に代表される1970年代の政治スリラーであり、主人公が制度の全体像を知らないまま追われる不安を中心に据えた。さらに監督は、企画を『北北西に進路を取れ』と『ウォー・ゲーム』の組合せとして捉えていた。誤認された一般人の逃走と、国家機構に接続したコンピューターの脅威を一つの筋へ重ねた設計である。
参考情報:新聞社(米)
制作には技術顧問が入り、携帯電話の起動、GPSへの介入、監視カメラの利用などを調べた。D・J・カルーソは公開時、ARIIAのようにすべてを統合する装置は科学空想だが、映画で使った仕組みの九割は現実の延長にあり、誇張は一割ほどだと説明している。脚本も撮影準備中の技術変化へ合わせて更新され、五年後にすぐ古びて見えないことが目標だった。数字は客観的な安全評価ではないが、制作側が近未来ではなく現在進行形の恐怖として演出した基準を示している。
参考情報:公開資料(仏)
米国防総省は脚本を確認したうえで制作へ協力し、航空機とヘリコプターを無償で提供した。さらにペンタゴンへの着陸と施設での撮影も認められた。D・J・カルーソによれば、冒頭で国防長官が大統領の攻撃判断に迷いを示し、軍人を一面的な悪役にしなかったことが協力を得る一因になった。政府の監視システムが人間へ反旗を翻す映画でありながら、軍事場面の規模と具体性は政府機関との調整から生まれている。
参考情報:公開資料(仏)
米空軍は機材を貸しただけではなく、ロザリオ・ドーソン演じるゾーイ・ペレスの役割にも意見を出した。空軍特別捜査局の捜査官を捜査の周辺へ置かず、危機に対応する前線の人物として描くよう求め、その出番が強化された。ARIIAの施設へ直接入り込み、システム停止に関わる終盤は、制作協力側が空軍捜査官の専門性と現場性を示したいと考えた結果でもある。軍の監修が架空兵器の形だけでなく、誰が解決に動くかという脚本へ及んだ例である。
参考情報:公開資料(米)
米空軍の協力により、MQ-9リーパー実機の地上走行、離陸、飛行が撮影された。一方、トンネル内へ入り車を追うような現実には不可能な動きは、ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスがCGで作っている。制作側は一機の実物ワスプまたはリーパーを基準に形状と表面を捉え、危険な飛行だけをデジタルへ置き換えた。同じ機体を実写とCGで使い分けたため、軍事記録のような導入から荒唐無稽な追跡まで、一台の兵器としてつながって見える。
参考情報:公式資料(米)
D・J・カルーソは『キスキス,バンバン』でミシェル・モナハンを見た時から、いつか一緒に仕事をしたいと考えていた。若いシングルマザーのレイチェルが携帯電話の命令で危険へ引き込まれる脚本を読むと、その印象が役へ直結した。『M:i:III』での実績よりも、コメディ、恐怖、行動力を一人の人物に同居させた前者の演技が決め手だった。ジェリーとの恋愛を急いで作らず、息子を救う目的だけで走り続ける人物設計にも、その強さが使われている。
参考情報:公開資料(仏)
ARIIAの声を考えたD・J・カルーソが最初に思い浮かべたのは、メリル・ストリープだった。実際にはジュリアン・ムーアが録音を担当し、公開時まで正体を秘密にするためエンドクレジットへ名前を出さなかった。監督は空港アナウンスの調査を引き合いに、男性より女性の声の方が注意を引きやすいという判断も説明している。姿を一度も見せない声へ著名俳優を置きながら、その知名度を宣伝へ使わず、命令の権威と正体不明さを優先した配役である。
参考情報:公式資料(仏)
D・J・カルーソは本作で最終編集権を持ち、ドリームワークスから「あれを変えろ、これを変えろ」と指示されなかったと話している。同社では『ディスタービア』でも同様に制作でき、監督でもあるスティーヴン・スピルバーグが、助ける時と現場へ任せる時を理解していたとも述べた。映像商品には別エンディングや複数の削除場面が残るが、劇場公開版はスタジオが監督の手から取り上げて作り直した版ではない。
参考情報:公開資料(仏)
シカゴでロケ地を探していたD・J・カルーソは、廃車場の管理者からコンピューター制御できるクレーンがあると聞き、その設備をARIIAの武器へ取り込んだ。車同士の衝突や圧壊は実物と機械効果で行い、人を乗せられない車両はワイヤーで引いた。デジタル処理が担ったのは、主に画面へ映ったケーブルを消す作業である。監視システムが都市全体を操作する設定を、偶然見つけた現実の自動機械で具体的なアクションへ変えた場面だった。
参考情報:公開資料(仏)
追跡場面には八台のポルシェが用意されていた。逃走が進むにつれて増える傷を場面ごとにそろえる車、故障時の予備、スピン専用、水へ落とす車など、同じ外見でも役割は異なる。撮影順が物語順でなくても、一台の車が少しずつ破壊されていくように見せるための使い分けである。監督は「49台の車を壊した」という数字も耳にしていたが、その総数は自分では確認できないと区別しており、確実に説明できたのがこの八台だった。
参考情報:公開資料(仏)
トンネル追跡で横転する輸送コンテナは、約6万ポンド、約27トンの実物である。特殊効果監督ピーター・チェズニーは六週間を使い、巨大な箱を狙った位置で転がす装置とワイヤーのタイミングを組んだ。撮影は閉鎖されたエル・トロ海兵隊航空基地の滑走路で行われ、七台のカメラが一度きりの動きを同時に捉えた。車、コンテナ、爆発をケーブルで同期させ、危険区域の車内にはスタント要員も置かなかった。
参考情報:新聞社(米)
無人機と車が走れる条件を備えた長大トンネルは、ロケ地探しで見つからなかった。制作陣は閉鎖されたエル・トロ海兵隊航空基地に実物の路面、車両、コンテナを置き、壁、天井、照明、遠方の奥行きをデジタルで加えた。雨と夜の撮影で車体の輪郭を抜き出す作業は難しく、実写の爆発や反射を壊さずに架空の構造へなじませる必要があった。重量物は現場、空間の長さはVFXという分担である。
参考情報:VFX・撮影専門媒体
ARIIA室は約75度のセットから360度へ広がった。実際に建てられたのは円周約75度と数層分で、ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスが残りの壁、上層、奥行きを加え、人物を取り囲む360度の空間へ拡張した。撮影時には大規模なグリーンバックやブルーバックを置かず、俳優とセットの輪郭を多数のロトスコープとペイント作業で切り分けた。触れられる足場と終わりのない計算機空間を同じ画面へ重ねた構成である。
参考情報:VFX・撮影専門媒体
ARIIAの球面には、約3万個の発光する半球が設定されていた。各部品の光が近くの金属へどう反射するかをArnoldレンダラーで計算し、表面全体へ複雑な照り返しを生んだ。当時のソニー・ピクチャーズ・イメージワークスはレイトレーシングへの移行を進めており、本作のデジタルセット拡張はその実例にも使われた。均一な点滅模様を貼るのではなく、無数の小さな光源を持つ巨大装置として照明している。
参考情報:VFX・撮影専門媒体
ソニー・ピクチャーズ・イメージワークスが担当した主要VFXは、資料の集計範囲により約250から280ショットとされる。制作は二月から八月まで続き、約30人の中核班を軸に、ロトスコープ、ペイント、合成など必要な専門スタッフを加える体制で進んだ。全編をデジタルで塗り替えるのではなく、無人機の不可能な飛行、存在しないトンネル、ARIIA室の延長、架空建物の挿入へ作業を集中している。
参考情報:VFX・撮影専門媒体
空港の荷物搬送施設を逃げ回る場面は、CGで作った迷路ではなく、実物の高いベルト上で撮影された。ビリー・ボブ・ソーントンは、立ち上がれば頭を打ちかねない場所をベルトからベルトへ移ったと振り返っている。シャイア・ラブーフとミシェル・モナハンも多くの動作を自ら行い、撮影現場の取材ではモナハンが銀色のケースを抱えたままベルトを這い、追跡者を殴る一連の動きを繰り返していた。機械の速度と足場の狭さは、後から足した恐怖ではない。
参考情報:公開資料
荷物搬送ベルトの撮影で、ミシェル・モナハンはケーブルが首をかすめ、大きな腫れを作った。D・J・カルーソも突き出たボルトで頭を打ち、カメラ担当者の一人は傷を縫う必要があったと報じられている。ビリー・ボブ・ソーントンは後に、頭上の機械へぶつからないよう身を低くしたままベルト間を移動し、今なら代役を頼んだかもしれないと振り返った。高所の実物設備を使った撮影の危険が複数の負傷に表れている。
参考情報:公開資料
ブライアン・タイラーはハリウッド・スタジオ・シンフォニーの88人編成を指揮し、その演奏へ140を超える事前収録トラックを重ねた。追加音源のドラム、ギター、ピアノなどはタイラー自身が演奏している。大編成の金管が追跡の規模を支え、その下で多層のリズムがARIIAに休みなく押される感覚を作る。演奏を録った後に電子音を足しただけではなく、事前に積んだ音の層へオーケストラを組み込む録音だった。
参考情報:公開資料
音楽収録中、南カリフォルニアで地震が起き、ソニーの録音ステージは急きょ停止した。その時の揺れを捉えた音声まで現場記録に残っている。終幕へ続く曲は約10分、219小節に及び、ブライアン・タイラーは録音卓へ「219小節の狂乱」と予告した。オーケストラが一度で演奏し続けるには負担が大きかったため、三つの区間へ分けて収録されている。
参考情報:公開資料
国内Blu-rayには別エンディングと、「イーサンとの別れ」「ミニットマン」「双子の兄弟」など四項目の削除場面が収録されている。さらに約25分半の総合メイキング、約6分のワシントンD.C.ロケ、約9分の監視技術を扱う短編、D・J・カルーソと『ウォー・ゲーム』のジョン・バダムによる対談も収められた。劇場版で省かれた人物説明だけでなく、ARIIA室の建造や実物コンテナを動かす工程まで追える二枚組相当の特典構成である。
参考情報:公式資料(日)
終盤の宝石状爆弾は、子どもの演奏する特定の高いF音で起動する仕組みと説明される。ところが演奏を順に聞くと、その音程は決められた瞬間より前にも含まれているように聞こえる。単音の高さだけで作動する設定なのか、楽器の音色、強さ、長さまで条件なのかは本編で示されない。映像ソフトの英語音声と楽曲の採譜を合わせて確認したうえで扱いたい、音響系のグーフ候補である。
参考情報:映画データベース(米)
「シャイア・ラブーフは公開時、撮影中にFBI関係者から通話の五分の一が録音されていると聞き、二年前の自分の通話を再生されたとテレビで話した」という話がある。ただし、現時点で当事者資料や制作記録まで裏付けはそろっていない。「通話の五分の一が録音され、二年前の本人通話を聞かされた」説に関する手がかりは残るが、現段階で断定はできない。
参考情報:公開資料(米)
「シャイア・ラブーフが葬儀場面の感情を作るためジュディ・ガーランドの「虹の彼方に」を聴いたという」という話がある。ただし、現時点で当事者資料や制作記録まで裏付けはそろっていない。葬儀場面で「虹の彼方に」を聴いたをめぐる確かな制作資料が見つかるまで、結論は保留にする。
参考情報:映画データベース(米)
商業施設の棚には、D・J・カルーソとシャイア・ラブーフが直前に組んだ『ディスタービア』のDVDが置かれている可能性がある。映像ソフトの高解像度画面でパッケージと位置を確認できれば、前作を忍ばせた小道具として扱える。
参考情報:映画データベース(米)
ARIIAの着想には、アイザック・アシモフの短編「世界の全ての問題」が影響したという二次資料がある。一方、球状デザインがニュートリノ検出器に由来する説や、NSAの実在極秘計画を基にした説には制作証言が見つからない。監督が明言した参照先は、『ウォー・ゲーム』のWOPRと『2001年宇宙の旅』のHAL 9000である。
参考情報:映画データベース(米)
「ジ・エアボーン・トキシック・イベントの「サムタイム・アラウンド・ミッドナイト」が使われ、警報音には『スター・トレック』と同じ素材があるという」という話がある。ただし、現時点で当事者資料や制作記録まで裏付けはそろっていない。劇中曲と警報音の出典候補をめぐる確かな制作資料が見つかるまで、結論は保留にする。
参考情報:映画データベース(米)
終盤の式典は一般教書演説の時期を前提にした一月の出来事と説明される一方、防犯映像や機器表示を拾うと、物語が2009年1月26日から4月12日まで進んでいるという指摘もある。実在の大統領就任日程とも合わせ、画面内の日付を一つずつ採取しなければ時系列は確定できない。
参考情報:映画データベース(米)
画面に一瞬出るGPS座標がデイトン国際空港やシカゴの建物を示し、レイチェルの偽造旅券にはミシェル・モナハン本人と同じ月日の誕生日が使われているという指摘がある。教会の所在地情報も含め、静止画で数字と綴りを読んだうえで地図・建物記録へ照合できる候補である。
参考情報:映画データベース(米)
「ドーソンは『恋するポルノ・グラフィティ』より本作への出演を選んだという」という話がある。ただし、現時点で当事者資料や制作記録まで裏付けはそろっていない。ロザリオ・ドーソンが別作品を断って本作を選んだについての裏付けがそろうまでは、情報不足・要確認として扱う。
参考情報:映画データベース(米)