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2024年公開。NHKの自然番組『ダーウィンが来た!』劇場版第5弾で、恐竜編としては2020年作に続く2作目である。コロナ禍で海外ロケを断念した制作陣は北海道、伊豆大島、熊本県などの実景を撮影し、背景だけの「カラ絵」と、スタッフが恐竜の位置や動きを演じる「人あり」を重ねてCG班へ渡した。全長30メートル級の恐竜には5メートル超の物差しまで使ったという。最先端CGの下敷きが、野原で恐竜のまねをする人間だったわけだ。
本作は『ダーウィンが来た!』の映画としては第5弾だが、題名の「2」は劇場版全体の番号ではない。2020年公開の『恐竜超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』に続き、再び恐竜を主題にした第2作という意味である。シリーズ番号と恐竜編の番号が別に進んでいる。
参考情報:公式資料(日)
企画は2019年に始まり、制作陣は研究者が集まる年1回の国際学会へ出向いた。そこで「隕石衝突の日から恐竜はどのくらいで絶滅したのか」を複数の研究者へ繰り返し質問した。返答は1年以内から千年、万年まで大きく分かれ、その不一致自体が映画の出発点になった。
参考情報:インタビュー
南極を調査した研究者から、隕石衝突や山火事の痕跡がその地域では見つからず、恐竜が比較的長く生きた可能性があるという話を聞いたことが物語の着想になった。ただし監修の小林快次は、映画と同じ出来事があったかは証明できないと明言している。南極の避難場所は、研究の空白を慎重に物語化した部分である。
参考情報:インタビュー
植田和貴監督はまず文章で物語を作り、小林快次の助言を受けて絵コンテへ進んだ。監修では、研究上「絶対に違う」領域と「あり得るかもしれない」領域を分け、後者だけを相談しながらドラマへ取り込んだ。分からない部分を自由な空想で埋めるのではなく、可能性の境界を制作工程として設定している。
参考情報:インタビュー
背景まで全部CGではなく、実景へ恐竜を合成した。制作陣は実在する風景を先に撮影し、そこへCG恐竜を合成する方法を基本にした。人工物がなく、恐竜が現れても違和感の少ない場所を探す工程が、CG制作より前に必要だった。
参考情報:インタビュー(日)
前作ではニュージーランドなどで風景を撮影したが、本作はコロナ禍で海外ロケを断念した。制作陣は2020年に北海道、青森、鳥取などを下見し、2021年に国内の風景を撮影した。感染症による移動制限が、ゴンドワナや古代南極を日本各地で探す制作方針へ変わった。
参考情報:インタビュー(日)
巨大なプエルタサウルスや肉食恐竜マイプが歩くゴンドワナの大平原は、南米やアフリカではなく北海道の標茶町育成牧場で撮影された。広い草地と人工物の少ない地平線を素材に、恐竜のCGを加えている。日本の牧場が、約6600万年前の南半球へ置き換えられた。
参考情報:インタビュー(日)
プエルタサウルスが地熱を利用して卵を温める場面では、伊豆大島の火山性景観が使われた。恐竜の繁殖行動を描く研究上の仮説と、地面から熱が伝わるように見える現代の景観を組み合わせている。巨大恐竜の巣は、スタジオに作った地面ではなく島の実景が土台である。
参考情報:インタビュー(日)
隕石衝突後に一部の恐竜が生き延びる南極の風景は、実際の南極ではなく熊本で撮影された。海外へ行けない状況で、人工物が少なく、寒冷化した太古の土地へ変換できる地形を国内から選んでいる。北海道、伊豆大島、熊本が、編集とCGによって一つの古代世界へつながった。
参考情報:インタビュー(日)
本作の多くは約6600万年前を舞台にするが、バジャダサウルスは約1億4000万年前の生物である。その時代に現代の草地を映すのは不適切と判断し、草の少ない鳥取砂丘で背景を撮影した。同じ恐竜映画の中でも、生息年代に応じて使える日本の景観を分けている。
参考情報:インタビュー
植田監督が小林快次と初めて組んだ2005年の番組では、画面に草が映っていることを批判されたという。その後、恐竜の糞化石からイネ科植物の微化石が見つかり、白亜紀に草が存在した証拠が増えたため、本作では約6600万年前の場面に牧草地を使えると判断した。研究の更新が、撮影可能な場所を広げた例である。
参考情報:インタビュー
絵コンテを監修してから、一カットずつ風景を撮った。制作陣が作った絵コンテを小林快次が確認し、科学面を修正したうえで、恐竜を合成する風景を一カットずつ撮影した。CGの前段階で、恐竜の行動、カメラ位置、背景の範囲が共有されていた。
参考情報:インタビュー(日)
恐竜を合成する各カットでは、風景だけを撮る「カラ絵」に加え、恐竜が入る予定の場所へスタッフを立たせた「人あり」を必ず撮影した。後者によって、アニメーターは画面内の大きさと足場を判断できる。一つの完成カットに二種類の実写素材を用意するのが基本工程だった。
参考情報:インタビュー(日)
スタッフ自身が恐竜の動きを演じた。必要な場面ではスタッフが恐竜の歩き方や反応を身体で演じ、その動きを映像へ残した。アニメーターは人間が演じた恐竜から、監督が求める速度や重心を読み取り、CGの動きへ置き換えた。
参考情報:インタビュー(日)
全長30メートルを超えるプエルタサウルスは、人を立たせるだけでは頭や尾の位置を測れない。現場では5メートルを超える定規を用意し、スタッフの演技と組み合わせて巨体の範囲を示した。CG担当者はその実写記録を基準に、画面からはみ出すほどの体長を配置した。
参考情報:インタビュー(日)
植田監督は実在動物の自然番組で、追跡する個体に名前を付けて物語を組み立ててきた。一方、恐竜シリーズでは長く個体名を使わず、CGの質が上がった前作から挑戦した。本作でも種類ではなく特定の一頭として追えるようにし、巨大生物の行動を連続したドラマへ変えている。
参考情報:インタビュー
青い大型肉食恐竜として登場するマイプ・マクロソラックスは、2022年に新属新種として記載されたばかりだった。論文はアルゼンチン南部の約7000万年前の地層から見つかった大型メガラプトル類を報告している。劇場公開は2024年で、研究発表から約2年で主役級の恐竜として映像化された。
参考情報:公式資料
マイプという属名は、パタゴニア先住民アオニケンクの神話に登場し、「冷たい風で殺す死の影」を表す存在から採られた。種小名マクロソラックスは「大きい」と「胸郭」を組み合わせ、幅が1.2メートルを超えると推定された胸部を示す。映画向けの愛称ではなく、記載論文に定められた学名である。
参考情報:インタビュー
本作のマイプは青い体と、たてがみのような羽毛を持つ。しかし監修の小林快次は、恐竜が多様な羽毛色を持った可能性を説明する一方、映画の色が正しいと確定したわけではないと区別している。化石から分かる骨格と、行動や信号に使った可能性を基に補った復元デザインである。
参考情報:インタビュー
首に長い突起を並べたバジャダサウルス・プロヌスピナクスも、2019年に新属新種として記載された比較的新しい恐竜である。論文は神経棘が首の向きにかかわらず前方へ湾曲し、受動的な防御に使われた可能性を提示した。映画の奇抜な輪郭は、怪獣風の創作ではなく化石の特徴を出発点にしている。
参考情報:公式資料
南極の羽毛恐竜として登場するインペロバトル・アンタークティクスは、2019年に新属新種として記載された。化石は南極半島のジェームズ・ロス島で見つかった足の一部などに限られ、論文では基盤的なパラヴェス類の可能性が示された。映画の全身像は、断片的な化石と近縁種から組み立てた復元である。
参考情報:公式資料
地熱産卵は複数の研究をつないだ仮説。抱卵しない恐竜が寒冷化の中で卵を温めるため、地熱を利用できる場所へ移動した可能性を研究者の説から組み立てた。制作陣は複数の研究成果をつなぎ、別の研究者にも議論してもらった。
参考情報:インタビュー
過去の恐竜映画や番組は、北半球のティラノサウルスやトリケラトプスを中心にしがちだった。そこで本作は、近年発見が相次ぐ南半球のゴンドワナの多様性を見せることを第一の柱にした。第二の柱には、隕石衝突の瞬間と、その後をどこまで想像できるかというドラマを置いている。
参考情報:インタビュー(日)
水瀬いのりは収録前に台本を読み込み、初めて見る恐竜名の読み方だけでなく、名称の由来とビジュアルも調べた。たとえばゴンドワナは最初、別の抑揚を想像していたが、平板に発音することを確認したという。専門用語の多いナレーションを、音だけで処理せず意味から準備している。
参考情報:インタビュー(日)
水瀬いのりは、映像の中の人物を演じるのではなく、物語を俯瞰するストーリーテラーとして収録した。何が起きているかを補足しつつ、恐竜の行動をどう感じるかは観客へ残す立場である。場面によっては実況に近い調子も混ぜ、出来事の速度に声を合わせた。
参考情報:インタビュー(日)
エンドロールでは、完成したCGの裏でスタッフが恐竜を演じる様子など、制作工程の映像が流れる。植田監督は、ジャッキー・チェン映画のNG集になぞらえながら、子どもが特撮やCGの作り方へ興味を持つ入口にしたかったと説明した。本編の幻想を壊すのではなく、作る仕事をもう一つの見せ場にしている。
参考情報:インタビュー(日)
エンディング曲は、本作だけの新曲ではなく、テレビ版『ダーウィンが来た!』で親しまれてきたMISIAの『AMAZING LIFE』である。作詞はMISIA、作曲は内池秀和。劇場版第5弾でも同じ曲を使うことで、隕石後の生命を描いた物語を長寿番組の主題へ戻している。
参考情報:公式資料(日)
巨大恐竜の捕食や隕石災害を扱うが、映倫の審査では区分Gとなった。作品種別はドキュメンタリー、上映時間は1時間24分、審査番号は124274で、審査日は2024年1月31日である。家族向け作品という印象だけでなく、審査記録上も年齢制限のない公開形態だった。
参考情報:公式資料(日)
劇場公開から約1年後の2025年3月28日にDVDが発売された。通常版と初回限定版の双方に特製シールを封入し、初回限定版にはB6サイズのマイプのアクリルスタンドを付けた。本編は84分で、16対9のレターボックス、ステレオのドルビーデジタル収録である。
参考情報:公式資料
プエルタサウルスは映画内で40メートル近い巨大恐竜として描かれる。小林快次は、映画館の大きなスクリーンなら原寸に近い大きさで体感できることを劇場版の利点に挙げた。テレビで同じ映像を見る場合と異なり、恐竜の全身が人間の視野を占める尺度そのものが上映設計の一部になっている。
参考情報:インタビュー(日)
映画に登場する全長11メートル、高さ4.5メートルのデイノケイルスは、小林快次がモンゴルで発掘に関わった恐竜である。全身骨格は一頭の完全な化石がそのまま見つかったのではなく、複数の場所で発掘された骨を組み合わせて復元された。完成したCGの輪郭には、離れた標本をつなぐ研究作業がある。
参考情報:インタビュー(日)
映画は研究者ごとに異なる見解がある空白を物語化している。監修者も、衝突後の生存期間には答えがなく、映画どおりの出来事があったかは証明できないと説明している。
参考情報:公開資料
恐竜はCGだが、背景は北海道、伊豆大島、熊本、鳥取などの実景を撮影して合成する方法が基本である。全ての環境をコンピューター内で作った作品ではない。
参考情報:公開資料(日)
マイプの骨格資料は2022年の論文で記載されたが、映画と同じ青い色やたてがみが直接保存されていたわけではない。多様な羽毛色の可能性を基にした復元デザインとして扱う必要がある。
参考情報:公開資料
監修者は羽毛を持つ恐竜がいると説明しているが、すべての恐竜に同じ特徴が当てはまるとはしていない。種類ごとの化石証拠と近縁関係を分けて考える必要がある。
参考情報:公開資料