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2002年公開。イオン・プロダクション版007の第20作で、シリーズ40周年とピアース・ブロスナン版の第4作を兼ねたため、歴代作品への引用と当時最新のデジタル技術を一度に詰め込んだ。ピーター・ラモントが設計した氷の宮殿はパインウッドで約6か月かけて建てられ、半透明の壁を外側から照明する巨大セットとなった一方、アイスランドの追跡やホバークラフト戦には実景、模型、CGを混在させ、ホバークラフトだけで18台を破壊した。スペインのカディスをキューバに見立てた撮影では季節外れの寒さに遭い、海岸セットは嵐で流失するなど、南国も氷上も現場には素直に従わなかった。興行は当時のシリーズ最高級でも、CGへ大きく踏み込んだ演出は賛否を呼び、次作『カジノ・ロワイヤル』の現実志向へ反転する原因の一つとなった。記念作だからと過去と未来を全部載せた結果、ボンドより先にシリーズそのものが重量超過になったのである。
『007/ダイ・アナザー・デイ』の氷の宮殿は、建設に6か月をかけたセットだった。氷原の中で一瞬だけ現れる豪奢な舞台だが、裏では半年分の美術が積まれていた。かなり大がかりな秘密基地である。
冒頭で北朝鮮に見える海岸は、実はイングランドのコーンウォールで撮られた。007のロケ地は世界を飛び回るが、まず観客の目をだます仕事から始まっている。海の景色はなかなか手強い。
冒頭の追跡で使われたホバークラフト、グリフォン2000TDはかなり扱いにくい乗り物だった。ピアース・ブロスナンは石けんのようだと例えたそうで、滑るような画面の裏では操縦側も滑りっぱなしだったらしい。
『007/ダイ・アナザー・デイ』は、公式シリーズでボンドがひげ姿で登場した最初の一本だという。いつもの整った姿と違うだけで、任務の荒れ具合がすぐ伝わる。衣装より先に顔が語る場面である。
氷上のカーチェイスに使われたアストンマーティンV12ヴァンキッシュは、七台が撮影へ投入された。寄りの芝居用と、特殊効果チームが改造する用では役目が違う。主役車も一台では足りない。
市販のヴァンキッシュは安全装備のせいで、氷上のハンドブレーキターンができなかった。そこで特殊効果チームは車体の中身を作り替え、四輪駆動の仕組みまで入れたという。高級車はそのままでは映画向きではなかった。
アイスランドの氷河湖で撮ったカーチェイスは六週間を要した。その間にスタント用ヴァンキッシュ二台が、氷山への衝突や横転後の滑走で使えなくなったという。氷の上では車も容赦なく消耗する。
サーフィンと衛星イカロスのVFXは、担当者自身が当時には野心的すぎたかもしれないと振り返っている。技術の限界を知る人がそう言うのだから、現場の試行錯誤はかなり濃い。見え方まで含めて時代の痕跡だ。
『007/ダイ・アナザー・デイ』の水のVFXは、今のような既製の道具で済む時代ではなかった。デジタル水はまだ新しく、効果のためにコードを書く専門家まで必要だったという。波しぶき一つにも開発の気配がある。
見えなくなるアストンマーティンは、ただの魔法ではない。VFXチームは軍用技術を調べ、車の反対側の景色を発光素材へ映す発想で説得力を探った。ありえない装備にも理屈を与えるのが007らしい。
『007/ダイ・アナザー・デイ』のフェンシング対決は、ボブ・アンダーソンが振り付けた。元オリンピック選手で、『スター・ウォーズ』でも剣技の代役を務めた人物だという。刃の動きが妙に映画的なのも納得である。
キューバ設定の海辺は、スペインのカディスで撮られた。陽気な土地を求めて向かった撮影隊は、雨と風と雲に迎えられたという。南国の場面も、天気とは交渉できない。