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1993年公開。CMやビデオアート出身で長編未経験だったマルコ・ブランビヤを、ジョエル・シルヴァーが大作の監督へ抜擢し、シルヴェスター・スタローンとウェズリー・スナイプスを未来都市へ放り込んだ。撮影開始3日後にヒロイン役のロリ・ペティが降板し、サンドラ・ブロックへ交代、さらにスタローンの腕の負傷で約1週間止まるなど、初監督への歓迎はかなり手荒だった。再建されたロサンゼルス・コンベンションセンターを初めて大規模撮影に使い、企業ロゴと無菌的な公共空間を集めて未来社会を設計した。公開後は北米興行で首位を獲得し、制作上の混乱をどうにか娯楽へ凍結保存した。秩序を押しつける未来を笑う映画だが、撮影現場が最も欲しがっていたのは、降板も負傷もない普通の秩序だったようだ。
あの3枚の貝殻、用途を決めてから作った小道具ではない。ダニエル・ウォーターズが未来の浴室を考えあぐねた末、友人宅の飾りを手掛かりにしたという。説明されない未来道具だから、観客の想像が今も止まらない。
未来に残った大企業は米国版ではTaco Bellだが、海外の一部ではPizza Hutへ差し替えられた。台詞だけで済ませず、店の看板や映像まで作り直している。地域ごとに分岐した未来史という、妙に手間のかかった版違いだ。
企業が世界を支配する未来を茶化した映画なのに、公開25周年にはTaco Bell自身が劇中風の店舗企画を開いた。映画の冗談を企業が回収して、現実の宣伝にしてしまったわけだ。風刺が公式イベントへ一周した瞬間である。
初期の『デモリションマン』は、未来で警官と犯罪者が再戦するもっと硬派なアクションだったらしい。ダニエル・ウォーターズらの改稿で、罰金だらけの言葉や妙に清潔な生活が混ざった。銃撃戦に社会風刺を混ぜるから、この未来は変に明るくて落ち着かない。
荒廃した1996年の建物崩壊は、ミニチュアではなく実在の建物を解体して撮った。複数のカメラを置き、夜明け前の一回勝負へ備えたという。やり直せない爆破が、映画の出だしに本物の荒っぽさを残している。
撮影は当初約75日の予定から112日まで延び、予算も大きく膨らんだと報じられた。道路、服、看板のない生活まで、画面の隅々を未来へ寄せる必要があったからだ。未来を一面ずつ組み立てる撮影は、やはり手強い。
レニーナ役は、ローリ・ペティが撮影開始直後に離れ、サンドラ・ブロックへ交代した。知識だけで昔のアクション映画を愛する警官という役に、ブロックの勢いがぴたりとはまった。二日後の主演交代が、作品の軽さを決めたのかもしれない。
未来の道路を走る車には、GMが提供したコンセプトカーが混ざっている。制作側は警察車両も共同で設計し、現実に存在する試作車を街へ並べた。走れる未来のプロトタイプだから、CGだけの都市とは少し違う手触りになる。
サン・アンゼルスの無菌的な明るさは、商業施設や高級百貨店の均質な空気を手本にしたものだ。企業キャンパスをロケに使い、誰にとっても快適そうで、どこにも属さない街を作った。固有名のない快適さが、かえって不気味である。
地下社会でスパルタンが成人した娘と再会する場面は、実際に撮影されていた。だが試写ではレニーナとの関係が紛らわしくなり、物語の勢いも落ちたため外されたという。答えを削って速度を守る編集判断だった。
2014年の日本版Blu-rayには、1997年のテレビ放送版吹替が収録された。しかも放送で省かれた場面には追加の日本語音声まで作られている。昔の吹替を欠けたままにしない、なかなか珍しい補完作業だ。
サイモン役にはジャッキー・チェンが候補だった、という話が広く流通している。ただし本人、スタジオ、当時の業界資料へつながる根拠は見つかっていない。配役候補の噂としては面白いが、正式な交渉事実とは断定できない。