『ブロークンシティ』撮影直前に方式を変更した理由は、ソフトの未完成だった
『ブロークンシティ』の撮影監督ベン・セレシンは、当初、デジタルカメラでアナモフィック撮影をするつもりでした。ところが開始直前になって、必要なソフトウェアがまだ準備できていないと分かり、方式を変えています。レンズが壊れたという話ではなく、予定していた撮影の仕組みが間に合わなかったのです。[1]
それでも、現代の街を、どこか古典的な犯罪映画のように見せたいという狙いは残りました。
・初めてのデジタル映画で、自然の光を試したかった
セレシンによると、本作は自身にとって初めてデジタルで撮る映画でした。用意されたのはARRIのAlexa Studioのベータテスト機。街にある光を使いつつ、フィルム・ノワールを思わせる雰囲気を狙っていました。[1]
アナモフィックは、横方向を圧縮して記録し、上映時に広げる撮影方式です。その選択も、単に横長の画面を得るためだけでなく、映画の雰囲気を作る計画の一部でした。
・球面レンズへ変えても、狙いは変えなかった
ソフトが間に合わず、実際にはPanavisionの球面レンズを使うことになります。セレシンは、方式が変わっても、当初の美的な狙いに合う画面を目指せたと説明しています。[1]
取材ではデジタルで撮る利点として、その場で最終的な映像に近いものを見られることを挙げる一方、フィルムの見え方を今も基準にしているとも話しています。[1] 新しいカメラを選んだことと、画面まで新しい機材らしく見せたいことは、同じではなかったのですね。
・予定していなかった霧も、街の光になった
セレシンが具体例に挙げるのが、マーク・ウォールバーグの屋上の場面です。撮影の夜に霧が入り、街の灯りが反射して、画面の雰囲気を作りました。[1]
最初に計画した機材の組み合わせは使えず、現場では予定外の天候も加わる。それでも、どんな街の気配を残したいかは持ち続ける。本作の画作りは、機材の名前をそろえるだけで完成したものではありませんでした。