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1989年公開。三部作の第2作であり、第3作とほぼ連続して制作された。前作の成功を受けて規模は大きくなったが、未来、改変された1985年、そして再び1955年を描く複雑な構成は、脚本だけでなく撮影と視覚効果の現場にも相当な負担をかけた。複数の人物を同一画面に登場させるため、当時としては先進的なモーションコントロール撮影も投入されている。製作費は約4,000万ドル、世界興収は約3億3,300万ドル。未来を予言した映画として語られがちだが、実際の現場が先に直面していたのは、二本分の仕事を一気に処理するという極めて現実的な悪夢だった。
いまでこそ三部作の真ん中として完璧に見えるが、最初から続編前提だったわけではない。ボブ・ゲイルによると、1作目の劇場公開時には「To Be Continued」も無く、あとからビデオ版で足されたものだった。
1作目のラストでジェニファーまでデロリアンに乗せてしまったため、続編ではジェニファーの扱いが大問題になった。制作側は後年、この終わらせ方のせいで物語づくりがかなり縛られたと語っている。
初期案では、物語の後半が1955年ではなく1967年になる構想もあった。ロレインは反戦運動の学生、ジョージはバークレーの教授という案で、最終的に「1作目の裏側へ戻る」構造に落ち着いた。
ジョージ役のクリスピン・グローヴァーは続編に出演せず、別の俳優が特殊メイクで演じた。さらに1作目の映像も流用されたため、グローヴァーは容姿を無断で使われたとして訴訟を起こしている。
(※結末に触れる)グローヴァーが戻らないと決まると、もう一つの1985年ではジョージがすでに亡くなっている設定に変更された。キャスト交代の事情が、そのまま暗い世界線の物語にも影響している。
1作目のジェニファー役クローディア・ウェルズは続投予定だったが、母親の看病と撮影時期が重なり降板した。PART2ではエリザベス・シューが演じ、冒頭の「1作目ラスト」シーンも撮り直された。
PART2の冒頭は1作目ラストの再現だが、完全コピーではない。ジェニファー役の交代に加え、髪型・家の色味・間の取り方など、見比べると少しずつ違う箇所がある。
2015年のヒルバレーは、暗く煙たいSF都市ではなく、あえて明るくコミカルな未来として設計された。狙いは「技術が悪い未来」ではなく「そこに住む人間が問題を起こす未来」だったという。
ILMのジョン・ベルは、脚本が固まる前から未来のヒルバレー案を描いていた。知っていたのは「30年後へ行く」「ホバーボードが出る」程度。それでも街並みの未来像を大量に起こしたそうだ。
未来の小道具を全部見慣れない形にしたわけではない。ジョン・ベルは「85%は分かる形、15%だけ未来っぽく」を意識していたそうだ。だから奇妙なのに、ちゃんと生活感があるのだ。
マーティの未来ジャケットは、ただ派手なだけの服ではない。ゼメキスは「未来なら服を洗濯に出さず水で流せるはず」と考え、ゴム素材の調整式ジャケットというアイデアにつながった。
マーティの自動で締まるスニーカーは、Nikeとの協力から生まれたものだ。衣装担当は当初あまり乗り気ではなかったものの、未来の靴を考えるうちに、あの名物デザインへとたどり着いた。
映画の冗談のようなスニーカーは、のちに現実になった。Nikeは2016年、フィット自動調整つきの「Nike Mag」を89足だけ製作し、抽選の収益をマイケル・J・フォックス財団へ寄付している。
ホバーボードは映画用の小道具だが、ゼメキス監督が特典映像で「本物だけど安全上の理由で売れない」と冗談を言ったことから、信じる人が続出した。おもちゃ屋に問い合わせる人まで出た有名な都市伝説だ。
楽しげなホバーボード場面の裏で、市庁舎へ突入するシーンの撮影中にスタントのシェリル・ウィーラーさんが柱に衝突してコンクリートへ落下し、何度も手術が必要な大けがを負ったと、スパイク役のダーリーン・ヴォーゲルさんが明かしている。軽快な場面ほど、裏側の危険を知ると印象が変わる。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』のホバーボード撮影事故をめぐっては、「スパイク役のダーリーン・ヴォーゲルが亡くなった」という噂も広まった。しかし本人はこれを否定しており、実際に大けがをしたのはスタントダブルのシェリル・ウィーラーさんだった。
マーティ、息子、娘をマイケル・J・フォックスが一人で演じ分ける場面を支えたのが、ILMの「VistaGlide」というモーションコントロール技術だ。同じ俳優同士が会話するだけでなく、カメラまで動かせるのがすごいところだ。
劇場前に飛び出す『JAWS 19』のサメは、ILMの初期CGを使った有名な場面だ。資料によると、ケン・ラルストンはテスト段階の少し荒い質感を気に入り、そのまま本編に残したとされる。
劇中の架空続編『JAWS 19』の監督名は「マックス・スピルバーグ」だ。これは製作総指揮スティーヴン・スピルバーグの実の息子の名前で、当時まだ幼かったマックスを使った内輪ネタになっている。
劇中だけの冗談だった『JAWS 19』は、2015年の記念企画で本当に予告編が作られた。Universalが三部作30周年Blu-rayに合わせて公開したもので、映画の未来ネタが現実へ逆流した例だ。
カフェ「80's」でマーティの古いゲームの腕前にツッコむ少年の一人は、子役時代のイライジャ・ウッドだ。のちに『ロード・オブ・ザ・リング』のフロドで有名になる俳優が、未来の子ども役でちょこっと出ている。
カフェ「80's」に置かれた『ワイルドガンマン』は、実在ゲームをそのまま持ってきたわけではない。映画用にアーケード筐体が作られ、PART3の西部劇展開をそっと先取りする小道具にもなっている。
2015年でドクが着ている派手なシャツをよく見ると、列車柄が入っている。PART3のクライマックスで列車が大きな役割を持つので、ただの変な服ではなく、次作への小さな予告として読める。
ビフのホテル屋上からマーティを救った直後、デロリアンの時刻表示が一瞬「1885年1月1日」を出す。初見ではただの故障に見えるが、PART3へつながるかなり早めの伏線になっている。
いじめっ子ビフ自体は1作目からの常連だが、PART2の「カジノを持つ成金ビフ」については、ボブ・ゲイルがドナルド・トランプから影響を受けたと説明している。後年あらためて話題になったネタだ。
PART2の未来描写は、本気の予測というより「こうだったら笑える」を優先したものだ。指紋決済・ビデオ通話・薄型テレビなどは結果的にかなり当たったが、制作側の狙いは正確な予言ではなかった。
2002年の三部作DVDには、ワイド画面の切り出しがおかしい問題があり、のちにリコール扱いになったとされる。本編だけでなく、家庭用ソフトの歴史にも小さな事件があるという話だ。
2020年、Netflix配信版でマーティが雑誌を開く場面が一部短くなっているとファンが発見した。ボブ・ゲイルは「自分たちの知らない海外向け版らしい」と説明し、のちに劇場版へ戻されたと報じられている。
面白いのは興行収入そのものより公開タイミングだ。PART2は1989年の感謝祭週末に強烈なスタートを切り、『ロッキー4』が持っていた当時の記録を破ったと報じられている。
PART2は初回公開で世界興収およそ3.3億ドルを稼ぎ、1989年の世界興収では『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』『バットマン』に続く上位級のヒットだった。続編でも勢いはだいぶ強かったらしい。
ホバーボードをめぐって、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』では本当に浮くおもちゃだと信じる噂が広がった。監督の冗談めいた発言も火種になったとされるが、映画で使われた撮影技術をそのまま市販品として扱うのは誤りだ。