実際の飛行場に荒廃した風景を足し、暗視ゴーグル越しの敵は幽霊のように見せる。 リドリー・スコット監督の『ラスト・サバイバー』(2026)で、RISEが担当したVFXをThe Art of VFXの制作スタッフ取材からご紹介します。

飛行場は実物。荒廃した周囲をVFXで足す

主人公ヒッグたちの拠点は、イタリア・アルプスのふもとにある小さな飛行場で撮影されました。建物などのセットは実際に作り、広い画角で足りなくなる草木や壊れた飛行機をVFXで追加。RISEは、撮影した映像に合わせられる3Dの環境を用意しました。VFX統括チャーリー・ヘンリーの説明

撮影素材

撮影素材:滑走路と黄色い飛行機を撮った映像

完成映像

完成映像:滑走路の周囲に草木が広がった飛行場
画像引用:RISEのVFX比較、The Art of VFX掲載。滑走路の縁や奥の植生を見比べると、変化が分かります。© 2026 20th Century Studios, Inc. 掲載記事/撮影素材/完成映像

後からスコット監督が思いついた、使われなくなったフットボール場も追加されています。最初から全部をCGで作るのではなく、実際の場所とセットを土台にして、周囲を広げたわけですね。ヘンリーの制作取材

下の引いた画角では、そのフットボール場も確認できます。撮影素材では整った草地だった場所に、完成映像では背の高い草や放置された飛行機が加わり、奥にはゴールポストが見えます。黄色い機体が同じ位置にあるので、周囲がどこまで変わったかを追いやすい比較です。

撮影素材

撮影素材:広い草地の中に黄色い飛行機が見える空撮

完成映像

完成映像:草地に放置された機体とフットボール場が加わった空撮
画像引用:RISEの環境拡張。奥のゴールポストと、手前の白い機体にも注目。The Art of VFX掲載。© 2026 20th Century Studios, Inc. 掲載記事/撮影素材/完成映像

この植生づくりでは、撮影した草木とCGの境目をなじませるのに苦労したそうです。森から低木、背の高い草へとつなぎ、実物の風景との連続性を整えました。ブレンの植生制作の説明

未来のゴーグルなのに、映像は壊れかけ

バングリーが使う暗視ゴーグルの映像も、VFXで作られています。最初の夜間撮影では実際の暗視用レンズを試しましたが、スコット監督は、もっと近未来的で不気味な見え方を求めました。その後は暗い場所で情報を多く拾えるカメラと正面からの照明で撮り、仕上げで加工する方法に切り替えたそうです。ヘンリーの暗視撮影の説明

設定は「今より進んだ技術だけれど、作中では古びている機材」。 RISEのスチュアート・ブレンによると、映像のコマを間引いて動きをカクつかせ、残像も追加。緑を基本に、熱い部分にはオレンジ寄りの色を入れました。RISEの制作取材

敵のタトゥーが緑色の処理で埋もれないよう、その部分を分けて調整する工夫もしています。試行錯誤は数か月にわたり、スコット監督もRISEのスタジオを訪れて見え方を詰めました。ブレンの説明

襲撃場面では、別に撮影した敵の演技を合成して人数も増やしています。下は、その比較です。

撮影素材

撮影素材:監視塔の下を撮った夜の場面

完成映像

完成映像:手前に襲撃者たちが加わった場面
画像引用:RISEのVFX比較、The Art of VFX掲載。人を追加したカットで、暗視ゴーグル越しの画像ではありません。© 2026 20th Century Studios, Inc. 制作説明と掲載記事/撮影素材/完成映像

監視塔は実際に倒し、爆発と光を足す

倒れる監視塔にも、実物のセットが使われています。 現場では塔を傾ける仕掛けを用意し、VFXで敵や爆発を追加しました。ヘンリーによる襲撃場面の説明

撮影素材

撮影素材:傾く監視塔と手前で銃を構える人物

完成映像

完成映像:監視塔に炎が加わり周囲が明るく照らされた場面
画像引用:RISEの監視塔のVFX。左上の撮影用照明が目立たなくなり、塔の足元に炎が加わっています。The Art of VFX掲載。© 2026 20th Century Studios, Inc. 掲載記事/撮影素材/完成映像

この比較は、炎そのもの以外も見どころです。完成映像では、手前の人物の輪郭や右の小屋まで暖色に変わっています。暗い撮影素材に明るい炎だけを重ねたのではなく、その場が爆発の光を受けたように見せています。

続く爆発は、HoudiniというVFXソフトでシミュレーションしました。爆発を入れるタイミングに合わせ、撮影済みの人物や建物の明るさも調整しています。RISEの爆発と光の説明

撮影素材

撮影素材:倒れた監視塔と壊れた小屋が暗く写る場面

完成映像

完成映像:倒れた塔の下から炎と煙が広がる場面
画像引用:RISEによる爆発の合成。炎だけでなく、手前の地面と木材の照らされ方も変わっています。The Art of VFX掲載。© 2026 20th Century Studios, Inc. 掲載記事/撮影素材/完成映像

上の素材には、倒れた塔や壊れた小屋が既に写っています。下では、その形を残しながら炎、煙、飛び散る破片が加わる。実物を倒した動きと、後から作った爆発が一つの出来事につながって見えるようになっています。

飛行機の窓の外だけでなく、機内の光も作る

ヒッグと犬のジャスパーが並ぶ操縦席も、比較すると撮り方がよく分かります。撮影素材の窓の外はブルースクリーン。完成映像では、手前の人物と犬を残し、山や森の風景に置き換わっています。

撮影素材

撮影素材:窓の外が青い操縦席にヒッグとジャスパーが座る場面

完成映像

完成映像:操縦席の窓の外に山や森が広がる場面
画像引用:RISEの操縦席の合成。正面だけでなく、左右の窓にも背景が入っています。The Art of VFX掲載。© 2026 20th Century Studios, Inc. 掲載記事/撮影素材/完成映像

背景だけが動いても、機内の光が止まっていると、飛んで旋回している感じが出ません。 同じ映画で操縦席の合成を担当したBlueBoltは、CGの操縦席を使って、内部を移動する日差しを作りました。揺れもそのまま残すとは限らず、安定させるカットと、細かな振動を加えるカットがあったそうです。BlueBoltの制作取材/同社公式の制作説明

上の比較画像はRISEの担当カットですが、飛行中の機内を複数社で仕上げるうえでは、こうした光や揺れのつじつまも必要になるわけですね。

ちなみに、犬も本当に空を飛んでいたのでしょうか。トレーナーのカロリーナ・バジーレは航空団体AOPAの取材で、ジャスパー役の犬ラクは離陸していないと説明しています。機内の演技はスタジオで撮り、地上を動く機体での撮影も行いました。AOPAのトレーナー取材

ラクには、飛行機に乗り込み、決められた場所に座って前を見る練習をしてもらったそうです。窓の外の景色は合成でも、隣に座る犬の落ち着いた演技は、撮影前の準備があってこそだったんですね。バジーレの説明

監督と出演者が語る特別映像

日本公式が公開した、制作現場と監督・出演者のコメントを紹介する映像です。上で説明したVFXの工程解説とは別に、映画全体の雰囲気をご覧ください。

投稿元:20世紀スタジオ公式チャンネル。日本語字幕付き特別映像「人間ドラマも恐怖も全てを盛り込んだ」。YouTubeで見る

映画『ラスト・サバイバー』

パンデミックで人類の大半が死滅した世界。パイロットのヒッグが、無線で届いた謎の声を追って飛び立つサバイバル映画です。

20世紀スタジオ日本公式の作品情報

出典と映像